〇文日記

日付=文数で日記。

十五文日記

先月、あれほど所在地域で猛威を振るっていた高度流行性ウィルス疾患――いわゆるインフルエンザ――に、不思議なほど職場では感染する者がいなかった。

しかし、ここにきて高度流行性ウィルス疾患や、そこまではいかずとも発熱消耗性疾患――いわゆる風邪――の感染が同時多発で発生した。

こういった疾患への感染確率は冬季にはかなり高いものとなるのであり、しかも二回目以降の感染確率が格段に低下する以上、初回感染が先延ばしになればなるほど、同時感染は起こりやすくなるだろうし、同時感染者の数が増える。

まだ発症していない同僚が、今この瞬間にも高熱で倒れていることもじゅうぶんにあり得る。

さいわい僕はまだ感染していない。

もしかしたら感染しているのかもしれないが、疾患と呼べるほどの症状には至っていない。

ここ数ヶ月の筋力トレーニングの成果だろうか。

腸内環境に気をつかった食生活のおかげだろうか。

もしかしたら結婚しておらず、子育ての苦労を負っていないからなのかもしれない。

昨日と今日あわせて三名の同僚が育児の疲労を原因としてインフルエンザや風邪に感染しており、やはり子供の有無が大きく関わっているのだろう。

親は、自らの命をすり潰して子に与えているように見える。

子は、知らず知らず親の命を削っているように見える。

放っておいてもいずれ失われる命ならば、愛する者へ―――。

愛はまるで高熱の疾患のように、愛を胸に宿した者の命を消耗させる。

さいわい――なのかどうか――僕はまだ愛に感染していない。